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設備投資の稟議を通すために、塗布工程の改善効果をどう数値化するか

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最終更新日 2026年8月6日 by muta10

生産技術の仕事を22年やってきた峰岸と申します。
精密部品メーカーで接着とシールの工程を担当し、2液硬化型の自動塗布ラインを国内3拠点と海外1拠点で立ち上げてきました。
今は中小の製造現場に呼ばれて、設備選定の相談に乗っています。

そこで一番よく聞くのが「効果は分かっているのに稟議が通らない」という話です。
私自身も若い頃、同じ壁で2回止められました。

通らないのは金額ではなく、根拠の粒度

止められた稟議を振り返ると、書いてあったのは「品質が安定します」「省人化できます」でした。
どちらも本当のことですが、経理の側からは検証のしようがありません。

塗布工程の課題として、手作業では塗布量の調整や位置のずれが起きやすく、連続作業のため疲労による人的ミスも出やすいことが指摘されています。
自動化すればここが改善するのは事実です。
ただ、稟議で必要なのは「改善する」という予測ではなく、改善前の実測値のほうです。

先に測るべき数字は4つ

装置を探す前に、今の工程で次の4つを取っておいてください。
どれも特別な計測器は要りません。

  • 塗布不良率と手直し件数(次工程へ流出した分も分けて数える)
  • 1ワークあたりの塗布タクト(吐出だけでなく、拭き取りや条件出しも含めた実測)
  • 1日あたりの材料使用量と廃棄量(2液ならポットライフ超過で捨てた分を必ず分ける)
  • 塗布工程に投入している人時(段取り替えと立ち上げを含む)

このうち効きやすいのは、意外にも廃棄量です。
混合済みの樹脂はポットライフを過ぎれば硬化するため、少量ずつ手で混ぜている現場ほど捨てる量が積み上がります。
月次で金額に直すと、担当者の想像より一桁大きいことがあります。

測る期間は最低でも2週間、できれば1か月とってください。
1日だけの数字を持っていくと、その日がたまたま悪かっただけではないかと必ず返されます。
私は2週間分の日別データを表にして出した回から、質問の内容が「本当に効果があるのか」から「どの機種にするのか」に変わりました。

効果は回収期間に翻訳する

数字が揃ったら、投資額を年間の削減額で割ります。
中小機構のJ-Net21では、設備投資の採算性を判断する方法として回収期間法が紹介されており、投資額を投資によって得られるキャッシュフローの平均値で割って回収期間を算出するとされています。
何年で戻るかという1つの数字にすれば、稟議書を読む側の判断材料になります。

なお何年以内なら妥当かという基準は会社ごとに違うため、上司に先に聞いておくほうが早いです。
基準を知らないまま資料を作り込んで、金額の桁が最初から合っていなかった、という徒労は避けられます。

このとき削減額に入れてよいのは、実際に人や材料が減る分だけです。
「品質が上がって信頼が高まる」といった効果は本文で語り、計算式には入れないほうが通りやすいと感じています。

分母だけでなく、分子も動かせる

回収期間を縮めるには削減額を増やすしかない、と思われがちです。
実際には投資額そのものを制度で下げられます。

国税庁の中小企業経営強化税制では、対象となる機械装置は1台または1基の取得価額が160万円以上とされ、取得価額の7%(特定中小企業者等は10%)の税額控除か特別償却を選べます。
適用には中小企業等経営強化法の認定が必要で、指定期間は令和9年3月31日までです。

補助金なら、中小機構の中小企業省力化投資補助金(一般型)が塗布の自動化と相性のいい枠です。
人手不足の解消に効果があるロボット等の設備導入が対象で、補助率は中小企業で1/2、従業員規模に応じた上限額が定められています。

どちらも申請前に済ませておく手続きがあるので、発注のスケジュールから逆算して動いてください。

数字は実機テストで埋まる

改善後の数字は、カタログからは出てきません。
メーカーの実機テストに自社の材料を持ち込むのが確実です。

たとえば2液型ディスペンサーで塗布を自動化する製品ラインアップを見ると、テストの申込時点で主剤と硬化剤の粘度、配合比率、ポットライフ、1タクトの秒数、1日の使用量と生産数まで記入する形になっています。
稟議に必要な項目とほぼ重なります。

裏を返せば、この欄が埋まらないうちは稟議も書けない、ということです。

まとめ

  • 稟議が止まるのは効果の大小ではなく、改善前の実測値がないから
  • 不良率、タクト、材料使用量と廃棄量、人時の4つを先に測る
  • 削減額から回収期間を出し、判断できる1つの数字に翻訳する
  • 税制と補助金で投資額そのものを下げられる。手続きは発注前に
  • 改善後の数字は実機テストで取る

装置を選ぶ前に測る。
順番を逆にしなければ、稟議はだいたい通ります。